書評:エンジニアの知的生産術

西尾泰和『エンジニアの知的生産術』技術評論社、2018年は、学び方・発想法のなかではまず最初に読むべき本だ。
高校生や大学生なら、まずこの本を買って、いつでも手元においておくことを勧める。

この手の本は、ビジネス書コーナーに行けば大量にあるが、これまでの成果をまとめたものがこの本だ。
「2018年版 学び方の教科書」と名付けても良いぐらいだ。
少々残念というか、損をしているなと感じるのが、タイトルに「エンジニアの」とついていることだ。この本はエンジニアかどうか関係なく参考になるはずだ。
少しだけ、エンジニアでなくてはわかりにくい例示が使われているが、あまり深く追求しようとせず、エンジニアの内輪ネタが書かれていると思えばそんなに気にならないはずだ。

さて、この本だが、やる気の出し方、仕事のこなし方、本の読み方、記憶術、アイデアの作り方などのパートからなっている。
そしてそれぞれの分野で著名な著作を紹介しながら、より現代的な方法にそれをアレンジして、「今ならこうすればよいだろう」という提案をしている。

例えば、アイデアのまとめ方では、KJ法を中心として紹介している。
KJ法は社員研修などで体験したことがある人も多いだろうが、その真価はやはり川喜田二郎氏の『発想法』を読まなくてはわからない気がしていたのだが、この本のほうがむしろわかりやすい。また、時間のない人がKJ法を利用するための工夫も考えられている。

例えば、アイデアを書き出す段階を中断可能にするためにA4の用紙に付箋を貼っていく方法などが紹介されている。
ちなみに、僕は、A4のクリアファイルを切り開いて、使用している。そうすれば、いつでもA4サイズに折り畳めるし、作業するときにはA3のより広いエリアで作業ができる。

余談かもしれないが、川喜田二郎氏の発想法の場合は、彼の調査・研究のなかでの経験談も書かれており、いかにしてKJ法を開発するに至ったかといったこともわかるようになっている。そしてそれがとてもおもしろくて、研究者を志す人なら、一読を勧める。
けれども、アイデアのまとめ方、発想法を学びたいだけの人にとって、そういう情報は不要だろう。